ゲーム産業の進化と知的財産戦略 (記事2/3) ~クローンゲームとの戦いと「表現」の境界線~

特許と経済・トレンド分析

こんにちは。Hanaoです!

前回は、ゲーム開発の基本的な流れと、それを支える「知的財産権」のキホンについてお話ししました。ゲームのキャラクターや音楽、タイトルなどが、法律でしっかり守られているイメージ、少し掴んでいただけたでしょうか?

さて今回は、その知的財産権が、ゲームの歴史の中でどんな風に活躍し、時には大きな事件を引き起こしてきたのか、具体的なお話を交えながら探っていきたいと思います。「あのゲームもそんなことがあったの?」なんて驚きがあるかもしれませんよ。

「パックマン」が火付け役?ゲームとIPの歴史のはじまり

今では当たり前のように語られるゲームの知的財産ですが、昔は今ほど意識されていませんでした。1970年代、ビデオゲームが登場したばかりの頃は、IPに関する法律もまだ手探り状態で、開発者たちも「自分のゲームがマネされるかも」なんて、あまり深く考えていなかったようです。

そんな状況が一変するきっかけになったと言われるのが、1980年に登場した「パックマン」の大ヒットです。

パックマンは、その可愛らしいキャラクターとシンプルなルールで、世界中で大ブームになりました。すると、「これは儲かる!」と目をつけた人たちが、似たようなゲームをたくさん作り始めたんです。これが、「知的財産って大事だよね」と、ゲーム業界全体が気づく大きな転機となりました。パックマンの成功が、結果的にゲームのIPに関する法律や考え方を発展させることになったんですね。

その後、ゲームのタイトルやロゴを守る「商標権」、ゲームの内容(プログラムやグラフィック、音楽など)を守る「著作権」が、ゲーム業界でも非常に重要視されるようになっていきました。

守られるのはアイデア?それとも表現?有名な裁判から学ぶ

ゲームの歴史を語る上で欠かせないのが、「どこまでがアイデアで、どこからが著作権で守られる表現なのか」という問題です。これは、今も昔もゲームのIPを考える上で非常に悩ましいポイントなんです。

例えば、こんな裁判がありました。

  • アタリ vs フィリップス(パックマン vs K.C.マンチキン事件)
    • アタリ社がライセンス販売していた「パックマン」にそっくりな「K.C.マンチキン」というゲームが登場しました。
    • 裁判所は、「モンスターに追いかけられながらドットを食べる」というゲームの基本的なアイデアは著作権では守れないけれど、「パックマン」のキャラクター(黄色くて丸いパックマンや個性的なゴーストたち)の具体的な「表現」は著作権で守られると判断し、「K.C.マンチキン」の販売差し止めを命じました。
    • これは、ゲームのキャラクター表現の重要性を示した、初期の大きな判例です。
  • テトリス vs ミノ(テトリス vs クローンゲーム事件)
    • おなじみの落ち物パズル「テトリス」。これと非常によく似た「ミノ」というゲームが登場しました。
    • 裁判所は、「テトリス」のブロックの形や動き方、フィールドの見た目といった「ルック&フィール(見た目と雰囲気)」が、単なるアイデアを超えた創作的な「表現」であると認め、著作権侵害を認定しました。
    • ゲームのルール自体はアイデアなので著作権で守られにくいのですが、その「見せ方」には著作権が及ぶことを示した点で画期的でした。

これらの裁判を通して、「ゲームのアイデアそのものは自由に使っていいけど、キャラクターの見た目やゲーム全体の雰囲気といった具体的な表現をマネするのはダメだよ」という考え方が、だんだんと確立されていったのです。

日本のゲーム会社のIP戦略:任天堂の戦い

日本のゲーム会社も、早くから知的財産の重要性に気づき、積極的に権利を守ってきました。特に有名なのが任天堂です。

  • ドンキーコングとキングコング事件
    • 任天堂が「ドンキーコング」をアメリカで大ヒットさせた時、映画会社のユニバーサル・スタジオが「キングコングの権利を侵害している!」と訴えてきました。
    • しかし任天堂は、「キングコングはパブリックドメイン(社会全体の共有財産)であり、ドンキーコングは独自の創作物だ」と主張し、見事勝訴しました。この勝利は、当時まだ新興企業だった任天堂が、世界的な企業へと成長する大きな自信になったと言われています。
  • 積極的な商標・特許戦略
    • 任天堂は、「ドンキーコング」や「マリオブラザーズ」といったキャラクター名をいち早く商標登録したり、ゲームボーイの「十字キー」のような独自の技術を特許で押さえたりと、知的財産を巧みに活用してきました。
    • こうした戦略が、任天堂ブランドの価値を高め、模倣品を防ぎ、今日の成功に繋がっているんですね。

ゲームの歴史は、まさに知的財産との戦いの歴史でもあったわけです。クリエイターたちが苦労して生み出した「面白い!」という体験を守り、新しい挑戦を後押しするために、知的財産権はなくてはならない存在なんですね。

次回は、現代のゲームが抱える新たなIPの課題、例えばユーザーが作るコンテンツ(UGC)やAIが作るゲーム、そしてVR/ARやメタバースといった新しい技術とIPがどう関わってくるのか、といったお話をしていく予定です。ますます面白くなってきますよ!

なんでもよいので、気づいたことはお気軽にコメントください。ではまた!

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