こんにちは。Hanaoです!
皆さんは「世界の亀山モデル」という言葉、知っていますか?ちなみに私は今回の記事を書くにあたって色々調べるまで知りませんでした(笑)。かつて、シャープの液晶テレビは高品質の代名詞でした。その輝かしい成功の裏には、実は巧みな「知的財産戦略」があったのです。
今回は、シャープがどのようにして液晶技術の特許を武器に世界と渡り合ってきたのか、その知られざる一面を、知財や経済に詳しくない方にも分かりやすく掘り下げてみたいと思います。
「技術のシャープ」を支えた液晶発明群
シャープといえば、いつの時代もユニークな技術で私たちを驚かせてくれましたよね。特に液晶技術に関しては、他社の追随を許さない開発力で市場をリードしてきました。
例えば、以下のような技術を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これらの技術は、単に「すごい技術」というだけではありません。シャープはこれらをしっかりと特許で保護し、自社の強みとして活用してきたのです。シャープが保有するディスプレイ関連の特許は、なんと10,000件以上とも言われています。まさに、知恵の結晶ですね。
特に有名なのはIGZO技術でしょう。これは、独立行政法人の科学技術振興機構 (JST) が基本特許を持っていましたが、シャープはこの技術をいち早く実用化し、ライセンスを受けて製品に搭載しました。一時期、シャープが「IGZO」という名称の商標登録を試みたこともありましたが、これは認められませんでした。理由は、「インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素からなる酸化物」という物質の一般的な略称と見なされたためです。ちょっと専門的ですが、特定の企業が独占する名前ではない、ということですね。
ライセンスという名の「パス」と「タックル」~サムスン、AUOとの攻防~
さて、これだけ多くの強力な特許を持っていると、どうなるでしょうか?
そうです、他社がシャープの技術を使いたい場合、シャープにお伺いを立てる(ライセンス契約を結ぶ)必要が出てきます。逆に、シャープの製品が他社の特許を使っていると判断されれば、訴えられるリスクも出てきます。
ここで、シャープの巧みな戦略が見えてきます。
1. クロスライセンス戦略:攻守のバランス
シャープは、韓国の巨人サムスン電子や、台湾の大手パネルメーカーAUO(友達光電)といった強力なライバル企業と、液晶特許を巡って激しい争いを繰り広げました。しかし、最終的にはお互いの特許を使い合う「クロスライセンス契約」を締結することで、争いを収束させています。
これは、いわばお互いに「パス」を出し合うようなもの。自社の特許という「ボール」を相手に提供する代わりに、相手の持つ魅力的な「ボール」(特許)も使えるようにするわけです。これにより、無用な訴訟合戦を避け、お互いが事業を進めやすくなります。
特にAUOとの間では、このクロスライセンス契約によって、シャープはAUOから数十億円規模のライセンス収入を得ていたとも報じられています。これは、特許が単なる「守り」の道具ではなく、「攻め」の武器、つまり収益源にもなり得ることを示しています。
2. 特許侵害への断固たる対応
一方で、シャープは自社の特許権を侵害されたと判断した場合には、厳しい態度で臨むこともありました。
例えば、2000年代半ばには、台湾の複数の電機メーカーと液晶テレビに関する特許紛争がありましたが、多くは和解や提携に至っています。また、最近では2020年に、中国のCHOT(咸陽彩虹光電科技有限公司)などを特許侵害でアメリカの国際貿易委員会(ITC)に提訴しています。これは、「我々の開発した大切な技術を無断で使うことは許さない」という強い意志の表れと言えるでしょう。
このように、シャープは「対話(クロスライセンス)」と「力(訴訟)」を巧みに使い分け、自社の技術的優位性を守り、収益にも繋げてきたのです。
しかし、常にシャープが優位だったわけではありません。次の記事では、シャープが他社にライセンス料を支払ったケースや、特許戦略が経営に与えた影響、そして鴻海傘下に入ってからの変化について見ていきたいと思います。
(記事2/2へ続く)
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