こんにちは。Hanaoです!
前回の【第1部】では、特許情報収集の第一歩として、公的機関の情報源と無料の基本データベースをご紹介しました。 もう試していただけましたか?
【第2部】となる今回は、さらに一歩踏み込んで、より専門的なデータベース、特許に関する法律や過去の争い(判例)を調べる方法、そして業界の最新トレンドをキャッチするための情報源を徹底解説します! これを読めば、あなたも知財戦略を加速させる情報収集術が身につくはず。 さっそく見ていきましょう!
4. もっと深く知りたい!「専門データベース&ツール」
無料の基本データベースでも多くの情報は得られますが、より効率的に、より深く分析したい場合には、専門的なデータベースやツールが役立ちます。
4-1. 有料だけど高機能!商用データベースの世界
本格的な特許調査や分析を行う企業や専門家は、多くの場合、有料の商用データベースを利用しています。 これらのデータベースは、無料のものにはない高度な機能や膨大なデータ量、分析ツールを備えているのが特徴です。
- こんなことができる!
- 高精度な検索アルゴリズム: ノイズの少ない的確な検索結果を得やすい。
- 高度な分析機能: 特定技術分野の特許出願動向、競合他社のポートフォリオ分析、引用分析、パテントマップ作成など。
- アラート機能: 特定の技術分野や企業の最新特許情報を自動で通知。
- 網羅的なデータ収録: 非特許文献や判例情報、企業情報など、特許以外の情報も紐づけて分析できる場合も。
- 代表的なサービス(例)
- Clarivate社: Derwent Innovation™, Darts-ip™ (IP訴訟・判例情報に特化) など
- LexisNexis社: PatentSight®, TotalPatent One® など
- Questel社: Orbit Intelligence™ など
- ※その他にも国内外多数のサービスがあります。
- 初心者には… 利用料金が高額なものが多く、操作も専門知識を要する場合があるため、個人や初心者の方がいきなり利用するのはハードルが高いかもしれません。 ただ、もしお勤めの企業や所属する研究機関で導入されていれば、積極的に活用してみる価値は十分にあります。
4-2. ちょっとマニアック?でも役立つ無料ツール
有料データベースは手が届かない…という方でも、まだ諦めるのは早いです! 無料で利用できる、ユニークで高機能なツールも存在します。
- The Lens (Lens.org): https://www.lens.org/
- オーストラリアの非営利団体Cambiaが運営する、特許文献と学術文献を横断的に検索・分析できるプラットフォーム。
- 特許がどの学術文献を引用しているか、逆にどの学術文献が特許に引用されているかといった引用関係の可視化機能が充実。
- 生物学的な配列データ(PatSeq)や特許の法的状況に関する情報も提供。
- 研究開発者や学術関係者にとっては特に強力なツールです。
- WIPOのその他のツール
- WIPO Pearl: https://www.wipo.int/reference/ja/wipopearl/ WIPOが提供する多言語専門用語データベース。特許文献で使われる専門用語の正確な訳や定義を調べるのに役立ちます。PATENTSCOPEとも連携しています。
- WIPOのウェブサイトでは、この他にも統計データ分析ツールなど、知財に関する様々なデータベースやツールが公開されています。
【表3】専門データベース・ツールの特徴(一部抜粋)

5. 特許の「ルール」と「戦い」を知る!法律・判例情報
特許は法律で定められた権利です。そして、その権利を巡っては、時として企業間や発明者間で争い(訴訟)が起こることもあります。 ここでは、特許に関する法律や判例(過去の裁判例や審決例)を調べるための情報源をご紹介します。
5-1. 法律・条約の原文にあたる
特許制度の根幹となる法律や国際条約の原文を確認することは、正確な理解のために不可欠です。
- WIPO Lex: https://wipolex.wipo.int/ja/main/legislation WIPOが提供する、世界各国の知的財産関連法規や国際条約を収録したデータベース。日本語インターフェースもあり、国別・トピック別に検索できます。
- 各国の特許庁サイト内の法令セクション
- 日本の特許法や審査基準などは、JPOのウェブサイト内「[法令・基準](https://www.jpo.go.jp/system/laws/ высокая-guideline/index.html)」に掲載されています。
- 同様に、USPTO(米国特許商標庁)やEPO(欧州特許庁)のウェブサイトでも、それぞれの国の法律や審査基準が公開されています。
5-2. 判例を調べる
特許に関する過去の裁判例(判例)や特許庁の判断(審決)は、現在の特許実務や将来の紛争を予測する上で重要な情報となります。
- 裁判所の判例検索データベース
- 日本: 裁判所のウェブサイト内「知的財産裁判例データベース」で、知的財産高等裁判所や地方裁判所の判決を検索できます。
- 米国: PACER (Public Access to Court Electronic Records) という連邦裁判所の電子記録システムがありますが、利用には登録と費用がかかる場合があります。また、各裁判所のウェブサイトで主要な判例が公開されていることもあります。
- 欧州: 2023年に本格始動した統一特許裁判所(UPC)の判例は、UPCのウェブサイトで公開が始まっています。
- JPOの審決データベース
- J-PlatPatを使えば、特許庁における審判(無効審判、訂正審判など)や異議申立の判断である「審決」を検索できます。拒絶査定不服審判の審決なども含まれます。
- Darts-ip™ (Clarivate社)
- 前述の商用データベースですが、世界のIP訴訟・判例情報を網羅的に収集・分析できる強力なツールとして特筆されます。特定の技術分野や企業に関する訴訟動向を把握するのに役立ちます。
5-3. 専門家の解説・論文を読む
法律や判例の原文だけでは理解が難しい場合や、特定のテーマについて深く掘り下げたい場合には、専門家による解説記事や学術論文が参考になります。
- 学術データベース
- Google Scholar: https://scholar.google.com/ – 幅広い学術論文を検索可能。
- CiNii (NII論文情報ナビゲータ): https://ci.nii.ac.jp/ – 日本の学術論文を中心に検索。
- J-STAGE (科学技術情報発信・流通総合システム): https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja – 日本の科学技術分野の電子ジャーナルを公開。
- SSRN (Social Science Research Network): https://www.ssrn.com/index.cfm/en/ – 社会科学分野(法学も含む)のプレプリント(査読前論文)やワーキングペーパーが多数公開。
- 専門雑誌・ジャーナル
- 国内: 日本知的財産協会の『知財管理』、日本弁理士会の『パテント』、発明推進協会の『発明』など。
- 国際: 『Journal of Intellectual Property Law & Practice (JIPLP)』(Oxford University Press)、『IIC – International Review of Intellectual Property and Competition Law』(Max Planck Institute) など、多数の専門誌があります。これらは大学図書館やオンライン購読サービスで閲覧できる場合があります。
【表4】法律・判例・学術情報源(一部抜粋)

6. 特許業界の「今」を追う!ニュースサイト・ブログ
特許を取り巻く状況は、法改正、注目判決、技術トレンドの変化など、常に動いています。最新情報をキャッチアップするためには、専門のニュースサイトやブログが欠かせません。
6-1. 専門ニュースサイトで最新情報をキャッチ
- 国内向け
- IP Watch (日本知的財産協会): https://www.jipa.or.jp/koho/ip_watch/ – 知財関連のニュースを幅広くカバー。
- パテントサロン: https://www.patentsalon.com/ – 弁理士や知財関係者によるブログ形式のニュース解説。
- 企業の知財部や法律事務所が発信するニュースリリースやメールマガジンも有用です。
- 海外向け(主に英語)
- IAM (Intellectual Asset Management): https://www.iam-media.com/ – 特許のビジネス的側面に強いメディア。市場動向や企業戦略に関する記事が豊富。
- Patently-O: https://patentlyo.com/ – 米国の特許法に関する著名なブログ。最新判例やUSPTOの動向を詳細に解説。
- JUVE Patent: https://www.juve-patent.com/ – 欧州(特にドイツやUPC)の特許訴訟ニュースに強い。
- Law360 IP: https://www.law360.com/ip – 米国の知財関連訴訟やニュースを速報(一部有料)。
- その他、Reuters IP News, Bloomberg Law – Intellectual Property News など大手通信社の専門セクションも参考になります。
6-2. 専門家のブログ・SNSもチェック
弁理士、弁護士、知財コンサルタントといった専門家の中には、個人でブログやSNS(X(旧Twitter)など)を通じて情報発信している方もいます。 ニュースサイトでは取り上げられないようなニッチな情報や、専門家の個人的な見解・分析に触れることができるのが魅力です。興味のある分野の専門家をフォローしてみるのも良いでしょう。
【表5】主な特許関連ニュースサイト・ブログ(一部抜粋)

7. 専門家の知恵袋!業界団体・法律事務所の刊行物
特許に関する深い知見や実務的な情報は、専門家が集う業界団体や、日々実務に携わる法律事務所・特許事務所からも発信されています。
7-1. 業界団体
- 日本知的財産協会(JIPA): https://www.jipa.or.jp/ 企業の知財担当者が中心となって活動する団体。各種委員会報告書、調査研究、セミナー、機関誌『知財管理』などを通じて有益な情報を発信。
- 日本弁理士会(JPAA): https://www.jpaa.or.jp/ 弁理士の全国組織。制度改正に関する意見書、研修資料、機関誌『パテント』などを発行。
- 国際的な団体:
- AIPPI (国際知的財産保護協会): https://aippi.org/ – 世界各国の知財専門家が集まり、知財制度の調和・発展について議論。大会決議録や出版物を発行。
- FICPI (国際弁理士連盟): https://ficpi.org/ – 開業弁理士を中心とした国際団体。実務的な情報交換や提言を行う。
- その他にも、IPO (Intellectual Property Owners Association)など、多くの団体が活動しています。
7-2. 法律事務所・特許事務所
国内外の多くの大手法律事務所や特許事務所は、自社のウェブサイト上で、知財に関する豊富な情報を提供しています。
- 提供情報の例
- 最新の法改正や重要な裁判例に関する解説記事・セミナー動画
- 特定の技術分野や国における知財戦略のポイント
- ニュースレターの配信(登録すれば定期的に最新情報が届くことも)
- 探し方のポイント
- 「(国名) 特許法律事務所」「(技術分野) 特許事務所」などのキーワードで検索。
- ランキング情報(例: IAM Patent 1000, Chambers and Partnersなど)を参考に、評価の高い事務所のサイトを見てみるのも一手です。
- これらの事務所の情報は、実務家の視点からの具体的なアドバイスや深い洞察が含まれていることが多いのが特徴です。
シリーズ全体のまとめと今後のアクションプラン
さて、【第1部】と【第2部】にわたり、特許情報収集のための様々な情報源をご紹介してきました。 情報源の種類が多岐にわたるので、最初は戸惑うかもしれませんね。
大切なのは、「何を知りたいのか(目的)」に応じて、適切な情報源を使い分けることです。
- ちょっと特許に触れてみたい、概要を知りたい: JPOやWIPOの初心者向けコンテンツ、Google Patents
- 特定の日本特許を調べたい: J-PlatPat
- グローバルな技術動向をざっくり把握したい: Espacenet, PATENTSCOPE, Google Patents
- 特定の企業の特許戦略を分析したい: 各データベースでの出願人検索、商用データベース(可能なら)
- 法律や判例の正確な情報を知りたい: WIPO Lex, 裁判所DB, JPO審決検索, 学術論文
- 最新の業界ニュースや法改正情報を追いたい: 専門ニュースサイト, 法律事務所のニュースレター
そして、一度調べたら終わりではなく、継続的に情報をチェックすることも重要です。 興味のある分野のアラート機能を設定したり、定期的にニュースサイトを巡回したりする習慣をつけると、知財の世界の動きに常にキャッチアップできますよ。
このシリーズが、皆さんの特許情報活用の「羅針盤」となれば幸いです。 ぜひ、今日ご紹介した情報源を実際に訪れて、知財の世界の扉を開いてみてください!
なんでもよいので、気づいたことはお気軽にコメントください。ではまた!
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