知的財産とSDGs・環境問題:特許データから見る未来への羅針盤 (1/2)

特許と経済・トレンド分析

こんにちは。Hanaoです!前回は知的財産について解説しました。今回はより具体的に、世の中のトレンドとの関連の例として、「SDGs」と知財についてみていきます。

特に地球温暖化などの環境問題は、世界共通の大きな課題ですよね。この解決に「知的財産」、略して「知財」がどんな役割を果たすのか、そして世界の国々や企業がどんな取り組みをしているのか、今回は特許のデータなどを交えながら、わかりやすく探っていきたいと思います。

知財って、SDGsや環境問題とどう関係するの?

知財の中でも、特許は新しい技術や発明を独占的に使える権利。これがあるからこそ、企業や研究者は安心して新しい技術開発に投資できるわけです。そして、この新しい技術こそが、環境問題の解決やSDGs(持続可能な開発目標)の達成に不可欠なんです。

例えば、こんな感じで知財はSDGsに貢献しています。

  • クリーンエネルギー技術(SDG 7): 太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーに関する発明は、特許で保護されることで開発が進み、地球温暖化対策に貢献します。
  • 持続可能な産業と技術革新(SDG 9): 省エネ技術や廃棄物削減技術など、環境負荷の少ない生産プロセスに関する発明も特許の対象です。
  • つくる責任つかう責任(SDG 12): リサイクルしやすい製品デザインや、廃棄物を減らすための新しいビジネスモデルなども、意匠権や特許、ノウハウとして保護され、持続可能な消費と生産を後押しします。

世界の取り組み事例:WIPO GREEN

世界知的所有権機関(WIPO)は、「WIPO GREEN」というプラットフォームを運営しています。これは、環境技術の提供者とそれを必要とする人を繋ぐオンライン市場のようなものです。

このような事例からも、知財が環境技術の普及を後押ししている様子がうかがえますね。

環境技術に関する特許出願のトレンド:世界と日本

では、実際に環境関連技術の特許出願は世界的に見てどうなっているのでしょうか?

WIPOの2024年のレポート「Mapping Innovations: Patents and the SDGs」によると、SDGsに関連する世界の特許出願(有効な特許ファミリー)のうち、環境技術が約75% と大きな割合を占めており、2000年から2023年にかけて顕著な増加傾向にあります。特に、気候変動対策(SDG 13)クリーンエネルギー(SDG 7) 分野の特許は力強く伸びています。

国別に見ると(SDGs関連の国際特許ファミリー数)、

  • 中国: 特許出願件数が急増しており、世界のトップクラスに。
  • 米国: こちらも力強い成長を見せています。
  • 欧州: 国際特許出願に占めるSDGs関連特許の「割合」の伸びが最も速い。
  • 日本: SDGs関連の国際特許ファミリー数は緩やかな成長。
  • 韓国: サムスンなどがバッテリー技術で存在感。

日本の状況:強みと課題

日本の特許庁(JPO)も、「GXTI(グリーン・トランスフォーメーション技術区分表)」という独自の分類を使って、環境技術の特許動向を分析しています。2023年10月31日更新のJPOの分析サマリーによると、

  • 日本がリードする分野:
    • 省エネルギー(gxB) 全般
    • 二次電池(gxC) (特に高性能なもの、全固体電池関連も増加)
    • 建物の省エネ技術
    • ペロブスカイト太陽電池
  • 競争が激しい・やや苦戦している分野:
    • 太陽光発電(全体では中国が猛追、日本は高効率な分野で強み)
    • バイオマスからの化学品製造(米国、欧州が強く、中国も台頭)

背景にあるもの

こうしたトレンドの背景には、各国の政策(例えば、日本の「GX(グリーン・トランスフォーメーション)戦略」)、企業の環境意識の高まり、そして何より「環境問題の解決が経済成長にも繋がる」という認識の世界的な広がりがあります。

日本は、省エネ技術や高性能な二次電池など、質の高い技術で強みを持っています。しかし、国際的な競争はますます激しくなっており、油断はできません。

ちょっと長くなってきましたので、今回はここまでとします。次回は、企業が知財をどう活用して環境問題に取り組んでいるのか、そして知財制度が抱える課題や国際的な議論について、さらに掘り下げてみたいと思います。

なんでもよいので、気づいたことはお気軽にコメントください。ではまた!

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